大人の自由空間
特性の測定
製作したベーシックアンプの概要

実験最終版として製作したのは、TANGO製トランスを使った「5881/6L6WGC(3結)全段差動プッシュプル・ベーシック・アンプ」です。TANGO製出力トランスはなかなか優秀で、特性の良さだけでなく、きめの細かい深みのある音をきかせてくれます。EL34や6G-B8等に差換えができるように回路定数に若干の妥協をしています(右の画像は6188とEL34を挿しています)。以下に、測定データをまとめました。

初段管:Sylvania 6188 or NEC 6SL7GT
出力段管:Sovtek 5881/6L6WGC(3結) or Telefunken/Siemens EL34(3結)
定電流回路:3端子レギュレータ(LM317T)
出力トランス:TANGO FE-25-8×2
電源トランス:TANGO PH-185
消費電力:74W/90W

 5881/6L6WGC(3結)EL34(3結)
L-chR-chL-chR-ch
総合利得(無帰還):7.38倍7.12倍8.72倍8.88倍
総合利得(NFB):5.68倍5.56倍6.45倍6.58倍
D.F.(無帰還):1.601.672.032.03
D.F.(NFB):2.392.333.003.00
NFB量:2.3dB2.2dB2.6dB2.6dB
残留雑音(補正なし):0.19mV0.20mV0.23mV0.21mV


周波数特性

TANGO製出力トランス FE-25-8は、文句のいいようのない優れた特性でした。世界に誇れるオーディオ・トランスといっていいと思います。低域レスポンスは、無帰還状態でも-0.5dB/10Hzが得られており、ちゃんとプロットしたのですがグラフ上では直線になっています。高域の-3dBポイントは38kHzです。

裸利得が7倍と少ししかないので、負帰還はわずかに2.2dBしかかかっていません。それでも、周波数特性はしっかり負帰還量に応じた特性改善がみられています。最終特性では、低域側は10Hzで文句なしのフラット、高域側の-3dBポイントは55kHzとなりました。ピークらしいピークがほとんどないところが、この出力トランスの優秀さを物語っています。

2004年にはいってから、クロス中和※を施して再測定したデータを追加しています(赤い線)。クロス中和に使用したコンデンサ容量は4.7pF(耐圧400V)でやや控え目な値です。その結果、高域の-3dBポイントは55kHzから80kHzに伸びました。

測定:2002.11.3、2004.1.11

※クロス中和・・・出力管のグリッド〜プレート間容量(Cg-p)による高域特性劣化を、出力管のグリッドとプッシュプルの反対側の出力管のプレートとの間に数pF程度のコンデンサをタスキがけに追加して打ち消す手法。詳細はこちらで。


歪み率特性

特筆すべきは歪み率の低さです。無帰還状態でも余裕で0.1%を割りました。私のオンボロ機材の測定限界が、100Hzで0.07%、1kHzで0.045%であるため、実際にはもう少し良い特性のはずです。このような低歪みが得られたことの背景には、本機の残留ノイズの少なさがあげられます。TANGO製出力トランス FE-25-8の電磁シールドがすこぶる優秀で、電源トランスの漏洩磁束を見事に排除しているからです。

5881/6L6WGC(3結)時の最大出力は、5%歪みで4.8W(1kHz)ですから計算どおりです。出力トランスも優秀ですが、1本たった1200円のSOVTEK製5881/6L6WGCも優秀です。電源電圧を上げプレート電流を増やしてやれば、歪みはさらに低下しもっとパワーが得られます。5881よりも内部抵抗が低いEL34(3結)では、電源の利用効率がアップするために最大出力が大きくなっています。5%歪みで5.5W(1kHz)を得ています。0.2W付近で宙返りしているのは、2003年のAprilfoolの影響と思われますが、宙返り部分以外は正しい値を表示しています。

5881/6L6WGC(3結)、 測定:2002.11.3

EL34(3結)、 測定:2003.3.23


左右チャネル間クロストーク特性

全段差動プッシュプル回路では、チャネル間のクロストーク特性の良さがひとつの特徴ですが、本機においては10kHz以上で若干の劣化が生じています。ボリューム内臓としたことによる宿命的な劣化です。それでも、20kHzで70dB以上取れていますから、文句をつけるつもりはありません。低域に関しては、いつもながら測定限界以下です。

測定:2002.11.3

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