Mini Watt Tourer with USB-DAC
トランジスタ式ミニワッターPart5
<USB DAC内蔵ミニワットツアラー>

CDジャケットとほぼ同サイズ。デザインは気まぐれで変わる。

<Part4からPart5へ>

トランジスタ式ミニワッターがPart4からPart5にバージョンアップしたのを受けて、その設計コンセプトをツアラーにも反映できないものかと考えました。ツアラーPart4の基板はすでに飽和状態なので、ツアラーのPart5化は無理だと思っていましたが、1000μF/16Vと同じサイズで容量が1.5倍のアルミ電解コンデンサがあることがわかり、スペースが確保できたのでツアラーPart5が実現できました。


<ブロック図および完成基板>

ブロック図は以下のとおりでPart4とPart5は全く同じです。左から右に向かって順に、AKI.DAC-U2704、LPF部、音量調整ボリューム、アンプ部、スピーカー端子です。アースの引き回しはこの図のとおりにしてあります。点線部分は基板内でつながっています。

 

<USB DAC部・・・Part4と同じ>

USB DAC部についてはこちら(http://www.op316.com/tubes/lpcd/aki-dac.htm)に解説があります。DACキットの基板側のアルミ電解コンデンサは、一部キット付属のものを使わずに以下のように置き換えています。

回路図部品名キット付属変更後
C547μF/25V470μF/10V-16V(8mm径)
C647μF/25V470μF/10V-16V(8mm径)
C1147μF/35V220μF/10V-16V
C14470μF/25V1000μF/10V-16V
C16100μF/35V220μF/10V-16V
C17100μF/35V220μF/10V-16V

<LPF部・・・Part4と同じ>

本機には、AKI.DAC-U2704に関する記事(http://www.op316.com/tubes/lpcd/aki-dac.htm)と同等のLPFを組み込んでいます。頒布しているインダクタは2.7mHですが、2.2mHも使うことができます。2.2mHの時の回路定数は()内の値になります。

<アンプ部および電源部>

アンプ部および電源の全回路は以下のとおりです。

<利得の設計・・・Part4と同じ>

旅先のホテルで鳴らす時はあまり音量を上げないことが多いので、利得はやや落としてあります。AKI.DACの出力信号電圧が0dBFSで0.63Vなので、これを5.8倍すると3.64Vになり、この時の出力は8Ω負荷で1.66Wです。これは本機の最大出力の1.5倍です。デジタルソースからはこれ以上大きな信号は出てきませんから、本機の音量調整ボリュームを最大にすると歪むわけですが、オーディオソースの中にはデジタルフォーマットのフルスケール(0dBFS)に対してレベルが低めのものもあるので、このような利得設定にしてあります。録音レベルが低いソースの場合、本機のボリュームをMAXにしても最大出力に至ることはありません。

本機の利得設定では、12時のポジションでの音量はかなり控えめになります。しかし、ホテルの部屋で鳴らすとこれでもかなり大きな音量に聞こえます。12時ポジションでもう少し音量が欲しい場合は、真空管式のミニワッターのように音量調整ボリュームに56kΩ〜100kΩの抵抗を追加してください。

<パワーアンプ部>

初段は2SK170の差動回路、2段目は2SA1680の差動回路です。Part4からPart5への変更ポイントは、2段目の差動回路が抵抗1本から定電流回路になったことです。

初段は他のトランジスタ式ミニワッターと同じ2SK170を使った最もオーソドックスな差動回路です。この差動バランスで出力端子側のDCオフセットが制御&決定されます。2SK170のドレイン電流は1.7mA、DCバランスの半固定抵抗器は10Ωですので、このボリュームで調整しきれるDCアンバランスの範囲は約17mVです。差動回路で使用する2SK170のバイアス特性のばらつきは14mVくらいに収めておかないと調整しきれません。頒布の2SK170は十分にこの範囲内です。

2段目は2SA1680による差動回路です。Part4では共通エミッタ側は約13Ωの抵抗のみでしたが、ここに定電流回路を割り込ませたのがPart5のPart5たるところです。しかし、12Vという低い電源電圧のなかでやりくりしますので、定電流回路に充てられる電圧はたった0.74Vしかありません。2SA950には2SA1680の2本分のコレクタ電流が流れますからその値は60mAです。4.7Ωのエミッタ抵抗に生じる電圧は60mA×4.7Ω=0.282Vですから、2SA950の動作に割り当てられるコレクタ〜エミッタ間電圧は、0.74V−0.282V=0.458Vということになります。2SA950を選んだ理由は、コレクタ〜エミッタ間電圧が低くても飽和しないで動作してくれるからです。

ところで、2段目は両方の2SA1680に180Ωのコレクタ負荷抵抗を入れてあります。一般にこの種の回路ではスピーカーをドライブしない側のコレクタ抵抗は省略するのが常ですが、本機ではあえて入れてあります。何故かというと、2SA1680のコレクタ電流が30mAほどもあるため、コレクタ負荷抵抗を省略した側の2SA1680が過熱してしまうのと、温度差が生じるためにVBEの差が大きくなり初段の差動バランスが不十分になってしまうからです。

出力段は相変わらず簡素な1段SEPP回路です。アイドリング電流は60mA前後ですので、出力トランジスタ1本あたりの消費電力は300〜400mWになります。バイアスはUF2010×2本で与えていますが、アイドリング電流はUF2010のばらつきや温度の状態によってかなり変動します。このダイオードは10DDA10やIN400X系に置き換えるとアイドリング電流が多くなりすぎて過熱しますので安易に他のダイオードに置き換えることはできません。

<Bass Boost回路・・・Part4と同じ>

ツアラーはもっぱら10cm以下の小型スピーカーを鳴らしますのでBass Boostは必須機能です。負帰還回路にCR(13kΩ〜15kΩと0.15μF)を追加することで、100Hz以下で5〜6dB程度の低域のブーストを行っています。この定数はさまざまな小型スピーカーを使って実験を行った結果で決めました。8cm以下のスピーカーは150Hz以下がバッサリと落ちますので、この程度のブーストではとうていフラットには及ばないのですが、聴感上はこれくらいでも十分に効果が認識できます。むしろ、これ以上欲張ると自然さが失われます。0.15μFの値を増減するとブーストを開始およびストップする周波数を変化させることができます。13kΩの値を大きくするとブーストをストップする周波数が低くなるため、低い周波数側でのブースト量もわずかに多くなります。

私は小型スピーカー限定で使うのでBass Boostは効きっぱなしにしてありますが、Bass BoostをOFFにしたい時は負帰還抵抗13kΩ(15kΩ)の両端をショートさせてください。基板パターンの●印のところから線を引き出して、適当なスイッチでON/OFFすることで、Bass BoostをOFF/ONできます。かなり小型のスイッチでないとうまく収まらないので奥行が15mm以内のものを頒布リストに加えてあります(通常の頒布のものは18mm)。

<電源部・・・Part4とほぼ同じ>

電源部はPart4とほとんど同じですが、おまじない程度で電源の入り口のところに22μHのインダクタを追加しました。使用しているACアダプタのスイッチング・ノイズの周波数は低い帯域に分布するので22μHではあまり効果がありませんが、高い周波数のノイズが出ている場合には効果があります。制御トランジスタは2SC2655を使いましたが、2SC4408や2SC2236も使えます。

本機の動作の安定は使用するACアダプタの定電圧性能に依存します。秋月で扱っている12V/1Aタイプのものはいずれも定電圧性能も雑音性能も優れているので、できるだけ同じものを使用してください。これは中国の"GO FORWARD ENTERPRISE CO."のOEMで、同じものが異なるブランドでも売られています。

非常に低ノイズな中型タイプ。左から、100〜240V/1A、100〜240V/1.5A、100〜120V/1A。

超小型タイプ。両方とも100〜240V/1Aだがメーカーが違う。私は両方とも使っています。

注意:ACアダプタには電源ON直後にかなりの過渡電流が流れます。電源ONのタイミングによってはACアダプタの保護回路が働くことがあり、その場合は電源電圧が高くなったり低くなったりしてLEDが点滅を繰り返します。その場合は、一旦電源を切てからすぐに再度電源ONしてみてください。


<DCオフセットと温度ドリフト・・・Part4と同じ>

2段直結差動回路というのは、2段目のトランジスタのベース〜エミッタ間電圧(VBE)が同じである限り、一旦初段のDCバランスをとってしまえば、比類なきDC安定が得られます。本機もその効果を狙ったのですが、なかなかどうして思惑通りにはゆかぬことがわかってきました。

2段目のトランジスタのベース〜エミッタ間電圧(VBE)がなかなか同じになってくれないのです。何故かというと、2個の2SA1680の動作条件が同じにならない、具体的にはまずコレクタ電流が同じにはならない、そしてコレクタ損失=温度が同じにはならないという問題です。特に温度の違いがばかになりません。温度が違えばベース〜エミッタ間電圧はどんどん変化する、hFEも変化するためにベース〜エミッタ間電圧の変化がさらに大きくなる。その結果として初段2SK170のドレイン電流のアンバランスを引き起こします。初段2SK170のドレイン電流のアンバランスはすなわち初段差動回路のバイアスの差になって現れ、その差がそのままDCオフセットを変化させてしまうわけです。

もうひとつの問題は、発熱部品と初段2SK170との距離関係です。2個の2SK170の近くに180Ω1/2Wの抵抗器がありますが、これが出す熱がばかにできません。そしてこの抵抗器は一方の2SK170に近いためそちら側の2SK170の温度がわずかに高くなってバイアスの差の原因になります。

上記2つの要素がどれくらいのインパクトがあるかというと、12mV〜15mVくらいのDCオフセットが生じます。これは10Ωの半固定抵抗器で調整できるぎりぎりの値で、場合によっては半固定抵抗器を回し切っても微妙に調整しきれずに数mV程度のオフセットが残ってしまいます。

この問題を解決するために、まず2個の2SA1680の消費電力ができるだけ同じになるように回路定数を選び直し、さらに左側の2SA1680のコレクタにダミーのダイオード(1S2076A)を1本追加して熱を分散させました。それから、2個の2SK170の温度差が少なくなるように1.2mm径の銅単線でブリッジを作り、エポキシ系ボンドで固定しました。この2つの方法の効果は非常に大きく、なんとか許容できる調整範囲に収まってくれました。画像では2SK170にだけブリッジをつけていますが、2SA1680側にもつけてやると差動バランスはさらに良くなります。使用したのはコニシのごく一般的な速乾性のエポキシ樹脂系2液混合タイプです。

熱結合ブリッジ→ ←使用したボンド

注意:DCオフセットの調整はケースに入れた状態で行います。基板単体でテストを行う場合は、小さな紙箱などに入れてケースに入れた時に近い状態で行ってください。また、電源ONしてからしばらくの間は電圧が初期流動状態になり、調整に適する安定状態にになるには20分以上を要します。また、DCオフセットは十数mV程度生じていても実害はありませんので、無理して「ゼロ」にしようとしないことです。周囲の温度条件が変われば電圧が動きますし、アンプ本体を立てたり寝かしたりしても筐体内の気流が変わって電圧も変化します。本機の電源回路は、4Ωスピーカーをつないだ状態で最大50mVのDCオフセットを吸収する能力を持っています。


<部品>

FET、トランジスタ・・・初段2SK170BLは、できるだけバイアス特性が揃ったペアを使ってください。ソース側のバイアス調整ボリューム(10Ω)による調整範囲はめいっぱい回し切っても15mVくらいしかありませんので無選別の2SK170は全く使えません(※)。頒布しているものは温度管理された条件下で±5mVの精度でペア取りしていますので十分な精度が得られます。BLランクを使用していますが、GRランクも問題なく使えます。
※売られている2SK170からランダムに拾った場合は150mVくらいのばらつきが生じるので選別が必要です。2SK170は製造ロットが同じでも特性のばらつきは小さくなりません。
2SA950-Y(定電流回路)はhFE=300前後からペア取りしたものを推奨します。

2SA1680(2段目段)はhFEが280以上でペア取りしたものを推奨します。2SA1680がどうしても手に入らない場合は、2SA966でなんとか代用できますがhFEは200台にとどまります。

2SC2655(電源部)はhFEが100以上あれば十分です。2SC2235、2SC2236、2SC4408も使えます。ここでは何を使っても音に影響はありません。

出力段の2SC3422/2SA1359はhFEが140未満のものは避けて、かつ左右で値が揃ったものを使用してください。なお、hFEは2SC3422よりも2SA1359の方が常に高めになるので、2SAと2SCのhFE値が同じになる必要はありません。

FETおよびトランジスタのリード線の接続は下図のとおりです。いずれも下から見た図(bottom view)です。たとえば、2SK170の場合は、印字面に向かって左からドレイン(D)〜ゲート(G)〜ソース(S)の順になります。2SA1680、2SC3964は、印字面に向かって左からエミッタ(E)〜コレクタ(C)〜ベース(B)の順ですが、2SA1931/2SC4881は左右が逆になります。これを間違えることが非常に多いので注意してください。

2SK170 2SA950(高さが低い)
2SA1680
2SC2655
2SC3422/2SA1359

本機で使用する半導体類はすべて選別品の頒布があります。

ダイオード、LED・・・出力段のバイアス用には、定格電流が2Aタイプの整流ダイオードのUF2010が適します。ダイオードの順電圧が出力段のアイドリング電流を支配しますので、頒布では順電圧が近いものを4個選んでいます。1N400Xシリーズや10DDA10などの1Aタイプでは、出力段のアイドリング電流が多くなりすぎるので使えません。PS2010Rも使えません。

UF2010は順電圧にかなりのばらつきがあるので、可能であれば順電圧が近いもので左右ペアを組むことを推奨します。2本直列にして使いますから、2本の合計値が近ければ十分です。順電圧の測定は、ダイオードモードがついているデジタルテスターで測定すれば足ります。温度が1℃変わるだけで0.002Vも変動してしまうので、測定時には指の熱が伝わらないように、エアコンの風が当たらないようにしてください。

定電流回路の1S2076Aは精密な順電圧が求められますので他のダイオードでは代替できません、必ず1S2076Aを使ってください。

220Ωに接する1S2076Aは定格電流が150mA以上あるシリコンダイオードであれば何でもOKで、1N400Xシリーズも使えます。LEDは、一般的な赤・橙・緑あたりを想定して約4mAで点灯するように設計してあります。明るさは3kΩの増減で調整できます。

(注)本機で使用する半導体類はすべて選別品の頒布があります。

抵抗器、コンデンサ・・・抵抗器は、回路図においてW数の記載のないものは1/4W型、それ以外は指定のW数のものを使ってください。0.68Ωは1Wの容量は必要ないのですが、より小型のカーボン抵抗や金属皮膜抵抗は1Ω未満がないので1Wを使っています。入力のコンデンサ(0.33μF)と位相補正コンデンサ(560pF)は耐圧50V以上の通常のフィルムコンデンサでOKですが、ともにサイズに制約があります。油断すると大きすぎて基板に乗りません。ここでは積層セラミックは音が変わってしまうので推奨しません。アルミ電解コンデンサは通常品を推奨します。オーディオ用として売られているものはサイズが大きいので基板スペースに入りきれませんし、ナチュラルな音にならないものが多く通常品がよろしいかと思います。(頒布あり)

・560pF・・・幅5mm以下。
・0.022μF・・幅6mm以下。
・0.15μF・・・幅8mm以下、厚さ2.6mm以下。
・0.33μF・・・幅12mm、厚さ4.5mm以下。
・100μF/10V・・・直径5.5mm以下。
・1500μF/10V・・・直径10mm以下。高さ注意。

2連ボリューム・・・ALPS製RK097型で、50kΩ2連を使用します。Part4の音量調整では廉価な小型2連ボリュームを使ったためギャングエラーが発生しましたが、本機ではギャングエラーが少ないALPS製RK097に切り替えたためギャングエラー補正抵抗は不要になりました。但し、基板取り付け用であるため端子が非常に小さいです。シャフトが半月型に切ってあるため、締め付けビスが1つだけのツマミが必要です。(頒布あり)

半固定抵抗器・・・BOURNSの25回転縦型タイプの10Ωを使用します。(頒布あり)

放熱器・・・ちょっと特殊な形状をしており、トランジスタなどに貼り付けて使用するタイプです。1cm×1cmですがこの大きさでないと基板に収まりません。貼り付けには熱伝導が良い両面テープを使用します。(頒布あり)

線材・・・本機で使用した線材は0.18Ssq(AWG24相当)です。0.2sqよりも太い線材を使うと、太すぎてラグ穴に入らない、ハンダ不良が生じやすいなどの問題が生じて仕上がりの品質が落ちます。平ラグの穴と穴とつなぐジャンパー線は、0.28〜0.35mmくらいでポリウレタンなどの表面処理をしていない銅線が適します。銅線はたいていのホームセンターで扱っています。(頒布あり)

ケース・・・ケースについては、こちら(http://www.op316.com/tubes/tourer-case.htm)に詳しい説明があります。(頒布なし)


<部品の頒布>

自作アンプですので、どんな部品を使い、どのように作るか、追加変更も全く自由です。しかし、地域によっては部品の入手が困難ですし、たとえ秋葉原が近くても同じ部品を買い揃えるのは困難です。本製作で使用した部品のうち、ACアダプタおよびケース以外のすべての部品は頒布がありますので気軽にご利用ください。

部品頒布ページ → http://www.op316.com/tubes/buhin/buhin.htmの中のここです。

<内部の様子>

参考画像です。結構すかすかなので、具合の良いケースが見つかればもっとコンパクトにできると思います。回路構成が単純なのでレイアウトや配線は各自で工夫してください。

(クリックで拡大)


<アースラインおよび筐体のアース・・・Part4と同じ>

アースラインは、回路図上に実装と同じように描いてありますので、配線の参考にしてください。USB DACの左右2つのアース(GND)はキットの基板では中でつながっているので、片チャネル側だけを使って取り出しています。左右から2本分けて出す意味はなく、この部分のアースを分けるとアースループの原因になります。ライン入力用の3.5mmステレオミニジャックのアース側はボリュームのアース側端子につないであります。

使用したケースは、ケースを構成するパーツ間の導通がないという重大な欠点があります。アルミボディやアルミパネルの表面がアルマイト処理をしてあるために・・・アルマイト処理は電気を通しません・・・パーツを組み立ててても電気的には導通してくれないために各パーツがアースから浮いてしまうのです。こうなってしまうと、せっかくのアルミケースなのにシールド効果がないばかりかむしろ不安定なノイズを誘発します。

アースラインと後面パネルの導通・・・面倒なんので後面パネルとアースの導通は取りませんでした。後面パネルはアースから浮いていますが実害はなく、雑音性能の低下もありませんでした。

アースラインと底板、側板、上板の導通・・・基板を固定したスペーサのうちの1個にアースラグを取り付け、ここをアンプ部基板のアースをつないで底板との導通を確保します。2枚の側板を固定している4個のビスをしっかりと締め付けることで、底板と側板との導通をはかります。同様にして上板を固定する4個のビスもしっかりと締め付けて側板との導通を確保します。

アースラインと前面パネル&ボリューム筐体の導通・・・ライン入力用の3.5mmステレオミニジャックのところでアースと前面パネルの導通をとっています。ボリューム筐体はパネルと接触することで間接的にアースとの導通をはかっています。ライン入力用の3.5mmステレオミニジャックを前面パネルに持ってきたのは、このあたりの始末が容易になるからです。


<製作手順・・・作成中>

  1. ケースの加工準備・・・加工図面を作成あるいはコピーし、2枚の基板(AKI.DACキット基板およびユニバーサル基板)を実際に当てながら位置を確認しつつ、ケース部材に加工用のマークを入れます。

    前面パネル・・・今回はライン入力用の3.5mmステレオミニジャックを前面に配置してみました。今まで左端だったボリュームの位置が右に寄ったためなんとなくバランスが悪い気がします。
    後面パネル・・・USBminiBタイプとDCジャックとスピーカー端子のみです。スピーカー端子はネジがないバナナ専用の小型のものを使いました。
    上面・・・これまでと同じです。穴の位置はパワートランジスタと放熱器の真上です。
    底面・・・AKI.DACの基板を取り付けるための穴の位置を間違えて開けてしまったため、余計な穴が2つ見えています。また、AKI.DACを取り付けるビスはこれまでサラビスでしたが、穴の位置の調整が可能となるようにトラスビスに変更しました。面一にならずにビスの頭が出っ張ってしまいましたが、ゴム足よりも0.8mmくらい低いので置いたときにテーブルに当たることはありません。

    (クリックで拡大)

  2. ケースの加工・・・本機の加工は丸穴しかありませんので、ドリルに加えてテーパーリーマーあるいはステップドリルがあれば作業できます。基板の取り付けにサラビスを使う場合は、すり鉢状の追加工が必要です。すべて実際の部品を当てて実際の大きさを確認しながら作業します。

  3. ユニバーサル基板・・・パターンのチェック・・・回路図と実際の配線のは見た感じがかなり異なるものです。人が作った基板パターンで製作する場合は、いきなり基板パターンを見て作るのではなく、どんな基板パターンなのなかを学習してください。基板パターンを追ってそこから回路図を起こしてみる方法をおすすめします。おそらく、回路図とは似ても似つかない場所に部品が配置されていてびっくりされるでしょう。基板パターンの間違いが発見されることもあります。考えているうちにもっと良い基板パターンが思いつくこともあります。ですから、基板パターンからの回路図の逆作成は必ずやってください。

  4. タカスのユニバーサル基板の使い方はこちらに重要な解説があります。ユニバーサル基板の一般的な使い方とは考え方が異なりますが、この基板パターンで製作する時に必要な知識であり、さまざまなメリットがあるので必ずお読みください。
  5. ユニバーサル基板・・・ジャンパー線の取り付け・・・ユニバーサル基板では、パターンをつなぐ線は銅箔がある下側に這わせるのが普通ですが、本機では上側を這わせています。こうすることで、実装密度を高められる、接触導通が良くなる、部品の交換が容易・・・といったメリットが出ます。ジャンパー線には細めの0.28mm径の銅線を使います。これを「コの字」型に折り曲げたものを基板の上から差し込んでからホチキスの針のように下側で折り曲げて固定します。最初にこの作業をやっておけば、あとは半導体やCR類は上から差し込んでどんどんハンダづけするだけで完成してしまいます。半導体やCR類は下側で折り曲げませんので、作業性が良いだけでなく、間違えた時の交換も非常に簡単です。

    小型のJFETとトランジスタは上からみた形状を書き入れてあります。パワートランジスタは印字面側に「↑」マーク側をつけてあります。ジャンパー線は、実線が0.28mmのむきだしの銅線、破線が0.18sqの絶縁があるビニル線です。Bass Boostスイッチへの接続は●点のポイントです。

  6. ユニバーサル基板・・・ジャンパー線のハンダづけ・・・ジャンパー線を通した穴には、ジャンパー線しか通さない穴と、ジャンパー線だけでなく同じ穴に後から半導体やCR類のリード線も同居する穴の2種類があります。ジャンパー線しか通さない穴は今のうちにハンダづけできます。

  7. ユニバーサル基板・・・電源部の半導体やCR類の取り付け・・・電源部単体テストを視野に入れて、電源部の半導体やCR類を基板に取り付けてハンダづけします。電源部の範囲は以下の図のとおりです。

  8. ユニバーサル基板・・・電源部単体テスト(重要)・・・暫定的に電源部とACアダプタをつないで単体テストを行っておきましょう。これがOKになっていれば安心してアンプ部のテストができます。もし、アンプ部に配線ミスがあっても電源は正常だとして自信をもってトラブルシューティングができます。もし、このテストをやらずに一気にすべてを組み上げてから動作の異常に出遭っても、一体どこが間違っているのかまず発見できません。このテストを省略した場合は、掲示板でのサポートはありません。

    ・アースの導通確認・・・すべての★点がY点を基点として相互に導通(ほぼ0Ω)があるかどうかチェックします。
    ・通電テスト・・・ACアダプタを取り付け、Y点を基準にして、X点が+6V、Z点が-6Vであることを確認します。ACアダプタの電圧に対してほぼ半分±5%以内になっていればOKです。プラスマイナスの電圧配分は部品のばらつきや気温で変化しますので、プラスとマイナスの電圧が正確に同じになる必要はありません。
    ・通電テスト・・・2SC2655と180Ω1Wがともに熱を持っていることを確認します。
  9. 出力段トランジスタへの放熱器の貼り付け・・・出力段トランジスタ(2SA1359と2SC3422)には1cm角の小型の放熱器を貼り付けます。この作業は基板に実装する前にやっておいた方がやりやすいです。貼り付けには、頒布した放熱器と同梱の放熱用両面テープを使います。放熱器は10mm×10mmですがトランジスタは10mm×8mmなので、8mm×10mmくらいに切って使います。隣り合った2個のトランジスタは案外接近してますので、放熱器は左右にすこしずらして取り付けないと当たって見た目が悪いので注意してください(しかし、ケースに入れてしまえばどうせ見えませんし、放熱器同士が接触しても電気的にも不都合はありません)。

  10. ユニバーサル基板・・・アンプ部の半導体&CR類の取り付けとテスト・・・本機は実装密度が高く非常に混みあっています。立てて取り付ける抵抗器は、一方が胴体でもう一方がリード線ですから場所の余裕を考えて向きを決めます。考えないで適当な向きに取りつけてゆくと部品と部品が当たって入らなくなります。部品はすべて表面が絶縁されているので接触しても問題ありませんが、熱くなる部品の実装には若干の注意がいります。発熱部品の扱いは以下の通りです。

    ・ジャンパー線の忘れ物がないか念入りにチェックする。
    ・2SC3422と2SA1359周辺のビニル線のジャンパーは先に配線しておく。2SC3422と2SA1359を取り付けてしまってからでは無理。
    ・2SC3422と2SA1359・・・リード線を短くしすぎないで基板面から5mmくらい浮かせる。
    ・2SA1680と2SC2655・・・リード線を長めにして基板や周囲の部品から離す。
    ・180Ω1/2W、180Ω1W・・・かなり熱くなるので周囲のトランジスタやコンデンサには接触させない。リード線も長めにして位置を高くする。
    ・UF2010・・・2SC3422と2SA1359に接近した方がよい。温度制御のセンサーなので2SC3422と2SA1359との温度的な距離は左右チャネルで揃えた方がよい。
    ・0.68Ω1W・・・いずれも熱を出さないので周囲の部品と接触してもかまわない。
    ・コンデンサ・・・アルミ電解コンデンサもフィルムコンデンサも熱に弱いので発熱部品と接触させない。
    ・抵抗器・・・熱に強いので気にしなくてよい。
    4個のダイオードの向きを1つでも間違えた状態で電源ONすると、パワートランジスタに大変な過電流が流れて壊れますのでしっかりチェックしてください。慎重を期する場合は、左右片チャネルごとに動作試験をしながら作業を進めるのがいいでしょう。「アース」と「スピーカー出力」との間にDCVレンジのテスターを当てて電源ONします。10秒以内に±0.01V以内に落ち着けばアンプ部はほぼ正常とみていいでしょう。念のために、プラスマイナス電源の電圧も確認して±6V前後を維持していることも確認します。

    本機の出力段のアイドリング電流は、冷却スタート時で70〜100mA、十分に暖まった状態の安定動作時で50〜70mAです。各チャネルの出力段の両エミッタ間電圧を測定して1.36Ωで割ればアイドリング電流を求めることができます。実際に製作した8つのユニットの実測データがありますので参考にしてください。なお、季節による気温の違い、部品のばらつきを考慮すると、このデータ値の範囲から少々はみ出ても問題ではないと思います。

  11. AKI.DACキット基板・・・部品の取り付けと線の引き出し・・・AKI.DACキットの基板への部品の取り付けの説明はこちら(http://www.op316.com/tubes/lpcd/aki-dac.htm)にあります。キットの基板のランドは非常に小さいので、ハンダがきちんと浸透させるのが難しいです。細めのハンダとハンダごてをつかって、ルーペなどでよく見ながら部品を取り付けてください。本機の製作では端子台は使いません。

  12. ジャック類や各ユニットからの線出し・・・ケースが小さく配線が込み入っているので、ジャック類や各ユニットをケースに取り付けてから配線するのは困難です。そこで、下処理としてジャック類や各ユニットに線を取り付けてから組み立てた方がいいと思います。(ステレオミニジャックをつける場合はPart3に参考画像があります)

  13. LEDの接着・・・LEDはエポキシ系の2液混合型のボンドでパネルに接着します。ボンドはたっぷりつけてLEDをしっかりと固定します。LEDの足は長さが違っていて長い方が+です。足を同じ長さに切ってしまうとどちらが+かわからなくなりますので、切る時も長さを違えて切るようにします。

  14. パネル、ケース本体、ボリュームのシャフト&筐体のアース・・・タカチのHIT-13-3-13は、パネルと本体の間の導通がないという欠点があります。アルミボディやアルミパネルの表面がアルマイト処理をしてあるために・・・アルマイト処理は電気を通しません・・・パーツを組み立てても電気的には導通してくれないためにアースから浮いてしまうのです。せっかくのアルミケースなのにシールド効果がないばかりか、むしろ不安定なノイズを誘発します。そこで以下の方法ですべての部品のアース導通を確保します。

    ケース本体のアース・・・基板のところにアースラグを取り付け、金属スペーサを通じて底板と導通させます。
    後面パネルのアース・・・Part3ではステレオミニジャックのアース側とパネルを導通させましたが、Part4やPart5では導通させていません。
    前面パネルのアース・・・ライン入力用の3.5mmステレオミニジャックのところでアースとの導通をとっています。
    上蓋のアース・・・取付ビスをきつく締めて導通させます。

  15. 部品および基板の取り付けとケースの組み立て・・・ケースへの部品の取り付けですが、(1)LEDの(1)AKI.DACキット基板の取り付け、(2)前後パネルの部品の取り付け、(3)ケースの組み立て、(4)アンプ本体の基板の取り付け、の順序がいいでしょう。こうでなければならないという決まりはありませんので、各自で工夫してください。

    音量調整ボリュームは基板取り付け型で端子が非常に小さいです(右画像)。小型の基板を取り付けてそこから線材を引き出すか、0.18sq以下の細めの線材を使って端子にからめるか、いずれかの方法がいいでしょう。頒布しているボリューム(RK-097)はシャフトに半月型の切り欠けがあるため、ツマミはツマミはK100-16シリーズなど取り付けネジが1個ものでないとフィットしません。

  16. 動作確認と調整・・・すべての配線が完了したら、動作確認試験を行います。アンプ部の単体試験はすでに済んでいますから、組み上げた状態でも同じ結果が出るかどうか確認します。DCVレンジにセットしたテスターでスピーカー端子間の電圧を監視しながら、数分間かけて基板の温度が上昇して安定するのを待ちます。次に、半固定抵抗器をまわして、スピーカー端子間の電圧がゼロ近くになるように調整します。3mV以内であればOKです。

    USBケーブルで本機とパソコンをつなぎ、AKI.DAC基板上の青色LEDが点灯することを確認します。本機のスピーカーをつないで音出しテストを行います。配線ミスがなければ、ノイズは全くきこえずクリアーな音で音楽が鳴り出します。上蓋を載せて外気を遮断した状態でさらに1時間程度動作させてから、スピーカー端子間の電圧がゼロ近くになるように再調整します。調整はこれで完了です。


<本機の特性・・・作成中ですがPart4とほとんど同じです>

アンプ部:

仕様および測定結果は以下のとおりです。

  • USB DAC: 16bit、44.1kHz/48kHz
  • 外部入力: 感度=0.55Vで最大出力、入力インピーダンス=約50kΩ
  • 消費電流: 無信号時=約310〜380mA at DC12V
  • 出力トランジスタ: アイドリング電流=70〜100mA(冷却スタート時)、50〜70mA(安定動作時)、消費電力=300〜450mW/個、表面温度=外気温+38℃(Max)
  • 利得: 5.8倍(8Ω負荷、1kHz)
  • 残留雑音: 24μV(帯域80kHz、ACアダプタに依存する)
  • 電源: DAC部=USBバスパワー、アンプ部=DC12V、1A〜
周波数特性は以下のとおりです。

アンプ部:

DAC+アンプ部:

アンプ部の歪み率特性は以下のとおりです。

(作成中)


<使用感と音の感想など>

Part5になって音の見通しや定位感がわずかに向上した気がします。一方でPart4のようなしっとり感は後退し、やや元気なめりはりの利いた音になったようにも思います。このあたりに来ると味の好みの問題で判断は変わるだろうと思います。

* * *

製作後少し時間が経った今(2016.11.24)の感想ですが、低域と中域ともに存在感が増したことに気が付きました。monitor audioのRadius45という超小型で200Hz以下でどんどん減衰してしまうスピーカで聞いていますが、ベースの音がちゃんと存在を主張して聞こえてきます。センターのボーカルもなかなか良いです。製作後、時間が経ったからなのか、最初からそうだったのに気付かなかったか、そこのところはわかりません。聞いていて心地よいことに変わりはありませんから、結果オーライということにしましょう。


Tourer Audio に戻る