カソード・フォロワその2・・・逆転カソード・フォロワ


カソード・フォロワ回路についての続編です。

信号ループ

前章「カソード・フォロワその1・・・定電流負荷」と同じ回路図の登場です。

右の回路(回路A)は、ごく普通のカソード・フォロワ回路です。プレート側からB電源を供給し、カソード抵抗側は接地されています。回路を見やすくするために、ここでの議論では関係のないグリッドバイアス回路部分は省略しています。

回路Aについて、信号ループがどうなっているのかを考えてみます。まず、真空管が動作するためのループは、(a)-(d)-(e)-(c)-(b)で一周します。

そのとき、Rkの両端に信号電圧が生じますので、ここから出力を取り出すのがカソード・フォロワというわけです。ですから、出力信号のループは、(b)-(f)-(g)-(e)-(c)で一周するものと考えられます。

同じことについて、回路Bについても考えてみます。

真空管が動作するためのループは、(a)-(d)-(e)-(c)-(b)で一周するのでしょうか。そうではありませんね。何故なら、(c)-(b)間はインピーダンスが無限大の定電流回路が割り込んでいるためにループが途切れていて、(a)-(d)-(e)-(c)-断-(b)になっています。

むしろ、カソード・フォロワの信号ループは、(a)-(d)-C2-(e)-(g)-(f)-C1-(b)と考えた方がその実体を正しく表わしています。

それは、通常の増幅回路では、カソード側が接地されていて、入力信号は、グリッド〜カソード間に与えられ、負荷はプレート側に与えられているのに対して、カソード・フォロワでは、プレート側が接地されていて、入力信号は、グリッド〜プレート間に与えられ、負荷はカソード側に与えられているからです。

そういえば、トランジスタ回路では、前者を「エミッタ接地増幅回路」と呼び、後者を「コレクタ接地増幅回路(すなわちエミッタ・フォロワ)」と呼ぶのでした。これを真空管回路にあてはめれば、前者を「カソード接地増幅回路」と呼び、後者「プレート接地増幅回路(すなわちカソード・フォロワ)」と呼ぶことができると思います。何故、そう呼ばないのか不思議なくらいです。


プレート接地増幅回路(すなわちカソード・フォロワ)

カソード・フォロワを「プレート接地増幅回路」と考えて、素直にプレートを接地してしまうと、右図のように電源もアースとの接続も「逆転」します。

プレートがアースされて、入力信号は、アース(E)〜グリッド(in)間にかかります。カソード側は、(とりあえず)定電流回路を入れてやり、マイナス電源(-200V)になります。出力は、カソード〜アース間から取り出します。

この時の信号ループは、(a)-(d)-(g)-(f)-C1-(b)となります。いかがでしょうか、こちらの回路の描きかたの方が素直ではないでしょうか。

そして、このループで重要なのは、信号ループから電源のパスコン「C2」がはずれているという点です。そういえば、前述の回路Aの信号ループは、(a)-(d)-C2-(e)-(g)-(f)-C1-(b)となっていて、ループ内にコンデンサが2つ(C1とC2)存在していたのでした。

もうひとつ、前述の回路Aでは、入力信号のループにも「C2」が介入していたことにお気づきでしょうか・・・in-G-(a)-(d)-C2-(e)-(c)-E1となっているのです。


コメント

残念ながら、真空管増幅回路において、マイナス電源によって増幅回路を構成するには、何かと壁が存在します。しかし、カソード・フォロワという回路方式が、実は本章で述べたような性格を持っているのだ、ということを念頭において設計するだけでも、よりよいアンプ設計のお役に立てるかもしれません。

同時に、半導体回路においても同様のことが言えます。むしろ、NPNに対してPNPという極性が逆転した接合デバイスを持った半導体回路にこそ、この考え方が活かされる可能性が存在すると思います。


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