スピーカー・スタンドの製作

実に簡単きわまりないスピーカー・スタンドです。諸般の事情によりスピーカーの高さを変えたかった、というのがことの発端でした。課題としては、廉価かつ簡単に作れて、音が変化しないかできれば少しましになってくれて・・・というのがこちらの希望です。この方式のヒントは、レコーディング・エンジニアの赤川新一さんが自分のモニター用に特注したスピーカースタンドでした。赤川さんは、板を縦にして何枚も重ねて角柱を作り、それをスピーカースタンドに使っていたのですが、これがすこぶる良い音で鳴っていました。「板を縦に使うのがいいみたい」の一言がヒントになりました。

高さが異なる2タイプ(左、クリックで拡大)、改良版(中央)、フロアタイプ(右)


■簡単版・・・材料の調達と製作

ホームセンターで、600mm×300mm×18mmの棚板用パイン材を購入し、右図のような寸法で切ってもらいます。この時重要なのは、縦を先に切ってから、2枚同時に横に切ってもらうということです。こうすることで2枚ずつ確実に高さを揃えることができます。

板の幅は200mmくらいから450mmくらいまでありますから、使うスピーカーの寸法に合わせて選んだらいいでしょう。今回対象となるスピーカー(HARBETH HL-P3ES)のサイズは、W=190、D=180くらいでしたので300mm幅の板を使いました。高さは、60mmのものと120mmのものを作りました。高さはお好みでいろいろ作ってみたらいいでしょう。高さが少し違うだけで鳴り方が変化するので、20〜30mm刻みくらいでいろんな高さのものを作っても面白いかもしれません。

板が切れたらボンドで「T字」型に接着します。使用したボンドは(株)アルデコ製の木工用水性タイプ「速乾アクリア」で、ホームセンターで廉価に購入できます。これは普通の白い木工用っぽいボンドなんですが非常に強力かつ扱いやすいです。「60分で切削加工が可」と書いてあるのでほんまかいなと思いつつためしに1個張り合わせてから1日置き、わざと力をかけて壊そうとしたら貼り合わせた部位ではなく木そのものが折れてしまいました。

接着が完了したら塗装です。私は色付きのオイルステンを使いました。オイルステンは、仕上がりはきれいで時間とともにオイルが浸透して板が硬化し丈夫になるのですが、乾くのに大変時間がかかりしかもいつまでもオイル臭が漂います。これもお好みで選んでください。

最後に、小さなゴム足や家具用のフェルトを貼り付けて3点を作れば完成です。当初は、3点指示ポイントは硬い方がいいだろうと思って、頭が丸い釘を使いましたがかえって音が変になってしまったのでやり直しました。


■音■

構造からもわかるように、基本的にスピーカーを鳴らすタイプのスタンドです。そして、高さによって音が変化します。総じて私の好みに合った鳴り方になってくれましたので、成功と言っていいことにしました。特に60mmの高さはなかなかいい感じですので、もしかしたら60mmでなくても、20mmでも30mmでも得るものがあるかもしれません。

■注意点■

このスピーカースタンドは板を縦に使って強度を出すところに特徴があります。縦になった板の断面に直接スピーカーの加重をかけることでその効果を得ていますから、天板を当ててテーブルのようにしてしまったら意味がなくなります。ご注意ください。

■改良版■

全く同じ構造なのですが、板の枚数を増やしたバージョンも作ってみたところ、これがなかなか具合がよろしいです。T字の縦・横ともに3枚ずつ重ねて木工用ボンドで貼り合わせています。

スピーカーは3点で支えたいので、ホームセンターで売っている貼り付け式の樹脂足を3箇所に貼ってあります。市販のスピーカーなどをみると、よく円錐形の金属製の支柱を使っているものがありますが、あれを使うと音がきわだつ変化があるので良くなったように感じることがありますが、私はあの音に疑問を持っています。音の自然さがなくなるように思います。それくらいなら、ゴムか弾性のある樹脂の方がはるかにまし、というのが私の判断です。(理想は生きた人の手のようです)

3枚貼り合わせバージョンは、初作の1枚構成のT字型に比べて落ち着いた音がします。


■フロアタイプ■

これまで製作したのは小型のデスクトップ用でした。もっと大型で床置きのスピーカーで使えるスピーカースタンドではどうなるのか、というのがこちらです。これくらいの高さになると、はたして安定してくれるのかどうか、簡単に倒れてしまわないだろうかと心配になります。

右の画像のスピーカーは、HARBETH HL-K6ESというちょっと珍しいスピーカーです。大きさは、W25cm×H52cm×D35.5cmです。スタンドの高さは57cmです。使用した板は、厚さ18mm×25cm×57cmでこれを4枚用意し、3枚貼りあわせて縦方向に使い、1枚を背面横方向に当てました。これでスピーカーの底面といい感じで合いました。

大きなサイズの板を貼り合せた場合は、経年変化により反りが生じます。反りが生じると貼り合せ面にすきまができて恰好悪いので、建具用のモクネジを埋め込んでいます。中央下の画像で、小さい黒っぽい点が何か所か見えますが、それが建具用のモクネジの頭です。接触ポイントは3点ではなく4点にしてありますが、この方がスピーカーは安定します。

これくらいの高さであればぐらつくことなく思っていた以上にしっかりと安定してくれました。但し、我が家は床が非常に固く重さをかけても全くたわまないので大丈夫でしたが、厚いカーペットが敷いてあったり、畳の上の場合は難しいかもしれません。マンションで義務付けられている衝撃対策済のフローリングはやわらかいので下に大きめの板を当てないと無理だと思います。やむを得ませんね。


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