6G-A4汎用シングル・アンプその1
6G-A4 SE Amplifier No.1

6G-A4は、東芝が開発した純日本製のオーディオ用3極管です。この6G-A4と、TANGOのローコストなOPT H5-Sを使用したステレオ・シングル・アンプです。6G-A4のほか、EL34、6550A、6F6ファミリー、6L6ファミリー、6V6ファミリー等が3極管接続またはウルトラリニアー接続で楽しむことができる汎用アンプでもあります。

6SL7GT1段増幅のあと、6SN7GTのカソード・フォロワと出力段を直結してA2級でドライブしています。このアンプは、後にカソード・フォロワによるA2級を廃して、CR結合によるA1級に変更されました。




■特徴

<初段・ドライバ段>

初段は、ごく一般的な自己バイアスの電圧増幅回路で、6SL7GTを1ユニットずつ片チャンネルに割り当てています。しかし、6SL7GT1段増幅程度では利得はぎりぎりで、十分なNFBをかけることはできませんでした。ちなみに、6SL7GT1段の利得の実測値は40倍〜44倍でした。

また、実際に組んでみると、6SL7GTの2ユニット間の容量結合のせいで高域におけるチャネル間クロストークがかなり悪化してしまいました。この影響は明確に音に現れます。高内部抵抗の複合管の各ユニットを不用意に左右両チャンネルに使ってはならないことを痛感させられました。

ドライバ段は、6SN7GTを使用したごく普通のカソード・フォロワですが、ドライバ段カソードと出力段グリッドとを直結したかったので、カソード側をマイナス電源で引き込んでいます。電源ON直後、電源の5AR4がヒートアップするまでの数秒間、立ち上がりの早いマイナス電源に引っ張られて6SL7GTのプレート電位までもマイナス側にシフトするため、電源のケミコンの電位逆転を食い止めるためにダイオード(10D10)を1本挿入してあります。ここでも各ユニットを左右両チャンネルに使っていますが、カソード・フォロワではプレートが接地されているために、プレートそのものがシールドの役割をするので、ここでは容量結合はほとんど起きていません。

<出力段>

6G-A4は、A2級の固定バイアス動作です。電源ON直後、出力管のグリッドにはマイナス150Vくらいになります。ほとんどの球が大丈夫だったのに、6BX7GTだけは耐圧がもたなくて昇天してしまうのがありました。6G-A4は1番ピンがグリッドに接続されているため、このままメタル管やEL34に差し替えようとすると不具合が生じます。そこで1番ピンをオープンにしたり、接地したりできるようなスイッチを追加しました。6G-A4を差したままの状態でこのスイッチを不用意にいじると、恐ろしいことになりますのでご注意ください。

ドライバ管のグリッド電位を可変する(-26V〜-36V)ことで、直結された出力管のグリッドバイアスをコントロール(-20V〜-30V)できるようになっています。出力管のカソード側には3Ωの抵抗が挿入されており、その両端電圧はシャーシ上面で計測できるようにしました。これで、さまざまな出力管の差し替えとバイアス調整がスピーディに行えるようになりました。

また、5極管やビーム管に差し替えた時に、ウルトラリニアー接続もできるような切り換えスイッチもつけています。しかし、実験の結果、6F6、6L6、EL34いずれの球の場合も、聴感上3結の方がウルトラリニアー接続よりも良い結果となりました。また、NECが電電公社のために6F6をベースに?開発した5極管CZ-504Dに差し替えるために、UZ→US変換ソケットを作りました。CZ-504Dのヒーターは5.5V1Aなので、変換ソケット内部に0.75Ω3Wのドロップ抵抗も組み込んであります。実際に入手できたCZ-504DはNEC製ではなくElevam製です。この球は、カソードが上下に突出しており、安定したエミッション確保への配慮がうかがえます。

各種出力管に差し替えた時の歪み率特性を測定してみました。

<電源>

整流管5AR4を使用したごく普通の両波整流です。高耐圧ダーリントン接続トランジスタ2SD798を使用したリプル・フィルタを挿入しています。整流にダイオードではなく球を採用した理由は簡単で、そこに5AR4があったからです。わずか100Ωではありますが、出力段への供給電源は左右チャネルに振り分けてデカップリングしてあります。電源における残留リプルは非常に少なく、1mV以下のレベルとなっています。アースの引き回しへの配慮もさることながら、16Ω出力側での残留ハムは補正なしで0.2mV以下という数字が得られました。

■構成および各段の動作条件

初段ドライバ段出力段
使用真空管/半導体6SL7GT NEC6SN7-GT Sylvania6G-A4 東芝
バイアス方式(Bias)自己バイアス(カソード・フォロワ)固定バイアス
電源供給電圧(Eb)278V144V278V
プレート電圧(Ep)158V166V270V
プレート電流(Ip)0.58mA2.0mA43mA
バイアス電圧(Eg1)-2.14V-7V-22V
負荷抵抗(RL)200kΩ//1MΩ68kΩ5kΩ
出力トランス(OPT)--TANGO H-5S

■特性

裸利得(RawGain)21.2dB-
最終利得(Gain)19.2dBNFB=2.0dB
周波数特性(FrequencyResponse)10Hz〜100kHz+0dB/-1dB
クロストーク(CrossTalk)42dB10Hz〜20kHz
出力(OutputPower)5.0W5%歪み at 1kHz
歪み率(Distortion)0.7%0.1W at 1kHz
2.2%1W at 1kHz
3.2%3W at 1kHz
ダンピング・ファクタ(D.F.)3.6〜4.410Hz〜20kHz
残留雑音(Noise)0.2mVL-ch,R-ch同一値(A補正なし)

■回路図


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