Mini Watters
6DJ8全段差動ミニワッター&ヘッドホンアンプ2012(V3)

6DJ8いろいろ。どれでもOK。
6DJ8を使った全段差動PPミニワッターのVersion3です。6DJ8の差動PPは、6DJ8本来の実力に加えて出力トランスに恵まれたことで、パワーこそ出ませんが洗練度の高いアンプになりました。おかげさまで非常に多くの方が製作され、愛用していただいています。本機と6N6P全段差動PPミニワッターとは同じ回路構成で良いのですが微妙に回路が異なり、そのことがずっと気になっておりました。そこで、思い切って6DJ8側の回路を見直しすことにしました。また、解説記事もすべて書き直しています。新たに製作される方は、過去の記事を参照することなく、この記事をお読みいただけば足りるように工夫しました。(もちろん、過去の2つの記事をお読みになっていただいてかまいません)

続編としてBass Boost化の記事がこちらにあります。それに対応すべく本記事における負帰還回路の定数も当初の値から変更しました。


<6DJ8全段差動ミニワッター&ヘッドホンアンプ>

本機の元になったのは6N6P全段差動PPミニワッターでした。より小型の6DJ8でも同様のアンプが作れないものか、と思って製作したのが最初のバージョンです。最初のバージョンの6DJ8全段差動PPは最大出力が0.4W程度しかなく、当初は高品位なヘッドホンアンプを狙ったもので「小出力ながらスピーカーも鳴らせる」というくらいの気持ちでいました。ヘッドホンアンプとしてはかなり出来が良いと私は思っています。8kΩ版を作って聞いてみた時、我ながらその音に聞き入ってしまったくらいですから。

そうこうするうちに春日無線変圧器から1次インピーダンスが14kΩの出力トランスが発売されるに至って、パワーアップをはかった14kΩ版(V2)に進化したのでした。この14kΩ版でスピーカーを鳴らしてみると心配されたローエンドの帯域特性もかえって良くなったくらいで思いのほか成績が良く、名だたるプロ音響エンジニア達がこぞって使い始めてしまったのでした。もっとも、パワーアップしたといっても最大出力は0.5Wをすこし超えた程度でしかありませんが、それでも家庭で日常に聞くには十分な音量が得られますから、アンプの出力というのは全く不思議なものだと思います。


<6DJ8の調達について>

6DJ8(欧州名はECC88)はさまざまな派生があります。ヒーター電圧だけが異なるのが7DJ8/PCC88(7.6V、0.3A)で基本特性は6DJ8/ECC88と全く同じです。6922/E88CCは6DJ8の高信頼バージョンということになっているらしいですが、球に6DJ8/6922と併記して刻印されているものもあるので、多くのメーカーは区別していないようです。7308/E188CCも6DJ8と同じとみて差し支えありません。これらすべて本機で使用できます。6DJ8を数多く製造・販売したメーカー/ブランドには、Sylvania、GE、Philips、Amperex、東芝、松下などがあります。6DJ8はどこで作っても6DJ8ですので、かりに異なるメーカー/ブランドが混ざってもかまいません。それくらいの器でものごとをとらえた方がオーディオは楽しくなります。

6DJ8およびそのファミリー球は、オーディオ用途として人気が衰えないために、市場在庫が減るにつれて値が上がってきました。10年くらい前であれば1000円くらいで買えたのに、今は2000円以上があたりまえになってしまったようです。真空管が活躍した頃は、真空管は産業を支える消耗品であり、決して高級品ではありませんでした。従って、当時製造された真空管はどれも一定の水準の品質があり、いいかえると特別に高級なものはありません。6DJ8についてうえば、いまどき1本数千円もするものは単に市場原理で高値がついているだけだと思ってください。私が使っている6DJ8あるいは6922は、10年以上前に1本1000円前後で購入したものばかりです。特別に高い値段がついたものを使っても音は変わりません。ロシア製の類似管6N23Pも6DJ8とほとんど同特性なのでそのまま差し替えができます。本ページの<電源の設計>のところで、7V管の7DJ8/PCC88についても触れていますので是非お読みください。

ということは、真空管ショップであろうが、オークションであろうが、どこで手に入れても似たようなものだということです。私は使っているさまざまな真空管の半数は、オークションで素性不明な相手から購入したものです。オーディオファンの中には、どこそこの6DJ8でないとダメだとか、音が全然違うといったことを言う人がいますが、当サイトではそういうことを言う人は一人もいませんので、安心して雑多な6DJ8を集めて使ってください。

真空管はもはや製造されていない過去のものですので、未使用のものはあっても新品ではありません。不良があったとしてもその責任をとって交換に応じるメーカーは存在せず、いわゆる1年保証もないというのが真実です。よく「信頼できる店で買いたいのでそういう店を紹介してくれ」というメールをもらいますが、私の返答は「数本に1本くらいおかしなのがあるという覚悟があればどこで買ってもいいじゃないですか」です。2本必要なら4本くらい買っておけば大丈夫です。


<2013.5の変更>

本機はバージョン3にあたります。作りやすさを考えてV2の回路を簡素化し、回路の動作の安定を高めるなどのマイナーチェンジをしました。性能的にな大きな変化はありません。

ヒーターをDC点火からAC点火に変更 ・・・・ V1およびV2ではヒーターをDC点火していましたが、回路が複雑になった割に効果が得られないのと、回路を簡略化するためにAC点火に改めました。AC点火にしても残留ハムに変化はないどころか、却って低雑音になっています(理由はわかりません)。なお、本機は電源トランスの容量に対して消費電力が少ないので、ヒーター巻き線の電圧が定格よりも高めに出ます。その場合は、ヒーターと直列に0.33〜0.68Ω程度の1W型の抵抗を割り込ませることで電圧を調整してください。

初段入力にDCカットのコンデンサを追加 ・・・・ パワーアップ版の6N6P全段差動ミニワッターと同じく初段入力のところにDCカットのためのコンデンサ(0.33μF)を入れました。

初段差動回路のDCバランス調整回路を変更 ・・・・ 初段の差動回路のDCバランス調整回路の半固定抵抗器の周辺への抵抗器の取り付け方をパワーアップ版の6N6P全段差動ミニワッターと同じにして信頼性を高めました。パワーアップ版の6N6P全段差動ミニワッターは150Ω×2ですが本機は68Ω×2です。これは、6N6Pと6DJ8とでは調整の感度が異なるためです。

回路構成および平ラグパターンは基本的に6N6P全段差動プッシュプル・ミニワッター2012と同じ ・・・・ になりました。(電源の整流方式のみ異なります)

負帰還回路のCR値をBass Boost改造版と同じ ・・・・ にして、バスブーストへの改造をやりやすくしました。負帰還回路定数は変わっていませんので、すでに製作されたものをわざわざ変更する意味はありません。


<2014.1の変更>

実験の結果、以下の2つの改良を行いました。

(1)出力管グリッド抵抗を3.3kΩから1kΩに変更・・・・A2級動作領域でのグリッド電流の制限が緩和されごくわずかですが最大出力がアップしました。

(2)電源回路の180kΩを100kΩに変更・・・・電源電圧を上げてロードラインをわずかに右にずらすことにより、A2級動作の範囲を減らしました。

この2つの変更の結果、出力段をドライブする条件が改善されて最大出力が15%〜20%アップしました。変化したのは最大出力付近のみで、他の特性は変わりません。


<全回路図>

本機の全回路図です。アンプ部の基本回路は6N6P全段差動プッシュプル・ミニワッター2012と同じで、使用部品の規格と回路定数のみ異なります。なお、これまでのさまざまな改良および使用部品の調達の都合などにより、回路図中の定数を赤字のとおり変更しました。


<初段の設計>

初段のロードラインは概ね下図のとおりです。初段電源電圧は約30Vとし(定電圧ダイオード16Vと13.7Vの直列)、初段ドレイン電圧は15Vくらいになります。図では、バイアスは-0.5Vくらいになっていますが、実機では2SK30Aのばらつきのために-0.4V〜-0.7Vくらいの範囲のどこかに落ち着きます。

定電流回路は1.87mAの定電流ダイオード(2SK30A-Yまたは2SK246-Yを選別)を使いました。ソース側のバイアス調整回路で半固定抵抗器(100Ω)と並列に2本の68Ωの抵抗が入れたのは、半固定抵抗器(100Ω)だけだと調整範囲が広くなりすぎてやや扱いにくい感じがしたためです。この抵抗はあった方が調整がスムーズになります。1本あたりのドレイン電流は0.935mAですから100Ωの時の調整範囲は93mV、68Ωの抵抗を追加した時の調整範囲はその半分以下になります。

なお、IDSS=1.87mAくらいの2SK30Aの選別が困難になってきましたので、頒布する部品は1.95mAに変更することがあります。その場合は初段ドレイン負荷抵抗値は16kΩから15kΩに変更して頒布します。


<出力段の設計>

青い線の解説:

本機の出力段の動作条件(ロードライン)は下図のとおりです。6DJ8のプレート電圧は130Vくらいが見込めます。差動PP回路の出力管1本あたりの負荷は、出力トランスの1次インピーダンスの1/2として設計しますので、図では7kΩの角度のロードラインを引いています。プレート電流は10mAよりも少しだけ多めなあたりが最適値になります。この時のバイアスは-2.8Vくらいになりそうですが、実際の球ではそれよりも若干浅めな球が多いようです。

この時の6DJ8のプレート損失は、130V×10.7mA=1.39Wになります。6DJ8ファミリーには、ECC88、6922、E88CC、7308、E188CCなどがあり、メーカーによって最大定格はまちまちですが、これくらいならぎりぎり許容範囲内とみていいでしょう。差動PP回路の最大出力は、動作が最適化されているという条件下では、以下の式で概算できます。

最大出力=Ip×Ip×RL÷4=10.7mA×10.67mA×14kΩ÷2=801mW
出力トランスのロスなどを考えると、0.6〜0.7Wくらいが得られれば上等ということになります。6DJ8でこれ以上パワーを欲張ると最大定格をオーバーしかねません。

赤い線の解説:

2014.1に、本機の出力段の動作条件(ロードライン)を変更し、6DJ8のプレート電圧を130Vから135Vに上げました。こうすることで、バイアスが浅い領域でのグリッド電流の影響が減るので最大出力がアップします。その変化の様子はページのいちばん下のグラフで確認できます。

この時の6DJ8のプレート損失は、135V×10.7mA=1.44Wになります。これによって6DJ8のプレート損失が0.05Wほど増加しましたが、10,000時間の通電試験の結果、球の劣化にはつながらないことは概ね確認してあります。


<出力回路の設計>

スピーカーは、「0〜4Ω間」または「0〜8Ω間」につなぎます。本機はパワーアンプともいえるし、スピーカーも鳴らすことができるヘッドホンアンプともいえます。4Ω端子と8Ω端子の両方を生かしつつヘッドホンジャックを取り付ける場合は下図のように配線してください。ヘッドホンジャックにプラグを差し込めば、スピーカーへの信号はカットされてヘッドホンが鳴ります。連動スイッチ付きのフォーンジャックを使った通常の切り替え方式ですと、スピーカーのインピーダンスは1種類に固定しなければなりませんが、この回路ですと2つ以上のインピーダンスに対応可能になります。回路図をよく解析していただきたいのですが、かなりトリッキーな方法でこの問題を解決しています。

ヘッドホン出力には8Ωタップを使い、2個の4.7Ωの抵抗器によるダミーロード兼アッテネータを経由しています。この本機の設定で音が小さい場合は、アッテネータにしないでダミーロードに10Ω(1/2W〜1W)を入れるだけにしてください。

スイッチ付きのヘッドホンジャックのしくみと接続法は下の画像のとおりです。出力トランスの8Ω端子からの線をジャックに背負わせたラグ板の端子についないでから、4.7Ωの抵抗につないでいます。ラグ板の取り付け方は下の方に画像があります。このタイプのヘッドホンジャックに関する詳しい解説はこのページにあります。


<電源の設計>

電源回路は、基本的にパワーアップ版の6N6P全段差動ミニワッターと同じで、電源トランスおよび回路定数が異なるだけです。

B+電源は、AC130Vを両波整流して約174Vを得ます。MOS-FETの2SK3767を使ったリプルフィルタによって残留リプルはほぼ完璧に除去されます。リプルフィルタの出口での電圧は155Vくらいになりますが、これをプラス側151Vとマイナス側-4Vに分けてアンプ部に供給します。

本機は電源トランスの容量の割りに消費電力が少ないので、ヒーター用の6.3V巻き線には6.6V〜6.7Vが出ます。そこで、ヒーター回路に0.47Ω1Wを割り込ませることで0.3Vほどドロップさせることを推奨します。

ヒーター電圧が高めに出るということは、ヒーター電圧が7Vの7DJ8をそのまま使うという手もあります。6.6V以上が得られれば十分に定格の許容範囲内です。6DJ8の市場相場はどんどん上がってしまいましたが、7DJ8は全く不人気なのでオークションでもAESでも千円台で手に入ります。


<使用部品>

入手しやすく頒布可能な部品だけで構成されており、特殊な部品は使っていません。

電源トランス・・・春日無線変圧器製のH17-04211を使います。この電源トランスはH17にある目的のために特注されたものですが、誰でも購入することができます。整流出力特性の実測データがこちらにあります。

出力トランス・・・春日無線変圧器製のKA-14-54Pを推奨します。この出力トランスは新しく設計されたもので超低域のクオリティが非常に高く、しかも14kΩという高インピーダンスであるにもかかわらず高域側の特性も優れています。

シャーシ&ケース・・・ミニワッターのために特注で作っているものです。当サイトで頒布しています。詳しくはこちら(http://www.op316.com/tubes/mw/mw1-box.htm)をご覧ください。

6DJ8・・・出力段真空管。真空管ショップまたはオークションで入手できます。詳しい説明が本ページの冒頭にあります。真空管の頒布はありませんので自力調達してください。

2SK30A-Y・・・初段差動回路。IDSS値が1.5mA以上あって、良く揃った選別ペアが必要です。製造中止になったため入手が困難になりつつありますが、ストックがありますので頒布しています。

2SK30A-Y・・・初段定電流回路。ソースとゲートをつないで定電流ダイオードにしたものを使います。IDSSの値が、気温25〜27℃において正確に1.87mA±0.05mAのものを選別してください。製造中止になったため入手が困難になりつつありますが、ストックがありますので頒布しています。

2SK3067 or 2SK3767・・・電源回路。耐圧(VDSS)が400V以上でドレイン電流(ID)が1A以上、形状がTO-220タイプのMOSFETが適します。

下図はFETの接続です。印字面に向かった図と下から見た図です。上から見た図と勘違いされる方が多いのでご注意ください。

1NU41・・・ファーストリカバリダイオード。電源の整流回路。1JU42は枯渇しましたので1NU41を使ってください。いよいよ入手困難なので、頒布品を使うか1N4006または1N4007で代用もできます。

1S2076A・・・小信号用シリコンダイオード。LED点灯。1S2075、1S1585〜1588、1SS270A、1N4148、などの同等のダイオードもOK。

HZ12-C2およびHZ16-2・・・ツェナ(定電圧)ダイオード。13.7V±0.4Vと16V±0.5Vのものを2個直列にして約30Vを得ます。合計が合えばいいので他の組み合わせでもOK。

各種ダイオードの記号と電流の方向と実物のマーキングです。下図左はダイオード(1JU42、1NU41、1S2076A)で、下図右はツェナ(定電圧)ダイオードです。電流の向きが逆ですのでご注意ください。


抵抗器・・・回路図のとおりです。W数記載がないものはすべて1/4W型です。

半固定抵抗器・・・BOURNSの15回転横型で100Ωのものを使います。

コンデンサ・・・回路図のとおりです。すべて通常品です。

平ラグおよびスペーサ・・・平ラグは20Pと12Pのものを使います。20P側は高さ10mm、12P側は高さ8mmの樹脂スペーサが適します。20P平ラグ中央の穴を固定するナットは誤接触を回避するためにポリ・ナットがよいです。いずれも頒布しています。

部品頒布のご案内はこちらです。→ http://www.op316.com/tubes/buhin/buhin.htm


<製作>

平ラグパターンについて:

平ラグパターンは以下のとおりです。平ラグユニットと周囲の配線とをつなぐ時にやりやすいように、線をつなぐ端子はできるだけ他の部品の配線とぶつからないように工夫し、シャーシ内の組み込んだ時に2W型および3W型抵抗が出す熱がコンデンサなど他の部品を熱しないように配慮してあります。ヒーターから引いた電源回路のLEDと直列に入れる560Ωは、スイッチの端子にじかづけして熱収縮チューブなどをかぶせてください(下に画像があります)。電源回路ユニットの空き端子(NC:Non Connection)は、ヒーター電圧が高すぎた時のドロップ抵抗にでも使ってください。平ラグ側にもドロップ抵抗のための空き端子を確保しましたが、場所としては電源トランスのNC端子の方が配線の収まりが良いです。なお、電源側のパターン図は2014.1.9に書き直しています。初段の定電流回路で使う2SK30Aは、右下図のようにSとGをつないだ定電流ダイオード接続にします。


平ラグへの実装時の注意点:

ダイオードやMOS-FETの取り付け向きに注意してください。2SK3767/3067は、印字面に向かって左から「GDS」です。20P平ラグのセンター穴周辺では、ここにネジが通ることを想定して周囲の部品はリード線を長めにしてこの穴をよけるように工夫してください。それを怠ると平ラグを取り付け時になってから慌てます。

電源部ユニットは、シャーシに取り付けてから平ラグに線をつなぐことは不可能なので、ユニットを組み上げる時に周囲とをつなぐ線材を長めにしたのをハンダ付けして出しておきます。そして、2本あるいは3本ずつセットになっているのでこれらを捻っておきます。アンプ部ユニットはシャーシに取り付けてから余裕配線できます。

作業の順序:

私が行った作業手順は以下のとおりです。

  1. シャーシ追加工の穴あけ・・・最低限必要な追加する穴は、シャーシ側面の電源ユニット取り付け穴(3.4mm径×2)です。それ以外に、スピーカーのインピーダンス切り替えスイッチ(6mm径)、入力切替ロータリースイッチ(9mm径)などがある場合は、ご自身の設計に合わせて穴あけを済ませておきます。穴あけの位置決めでは、他の部品と接触しないこと、トランスカバーなどを固定するビスの邪魔にならないことなど注意してください。シャーシのボリューム用の穴と入力端子(RCAジャック)用の穴の内側はサンドペーパーがけをして塗装をはがしておきます。

  2. 音量調整ボリュームシャフトの切断・・・金鋸でボリュームシャフトを適当な長さに切断します。ツマミの内側に加工時のバリが出ている場合は、そこにひっかかってボリュームシャフトが入りませんので、細いやすりを入れて削り取ります。

  3. 平ラグのパターンおよび工程計画を作成する。
    1. このページ(http://www.op316.com/tubes/tips/k-lug.htm)をしっかり読む。
    2. 平ラグのパターンシート(http://www.op316.com/tubes/tips/data/20p-large.pdf)をダウンロードする。
    3. 本サイトの回路図と平ラグパターンを見ながら自分で描いてみて、頭に入れる。
    4. 平ラグの端子穴ごとに作業手順が違うので、どんな手順でハンダづけしてゆくか考える。

  4. 平ラグユニット上の部品取り付けとジャンパー線の配線・・・ダイオードや2SK30Aの取り付け向きに注意してください。ツェナダイオードは熱に弱いのでリード線は短く切らない方が安全です(リード線は長くても動作に支障ありません)。20P平ラグのセンター穴まわりは、配線を終えてからスペーサを取り付けるのは難しいので、先にスペーサを取り付けてから配線すると作業がやりやすいです。特に560kΩの抵抗はスペーサをまたぐように取り付けますので手順をよく考えながら作業してください。勢いで作業を進めると後で泣きます。
    電源ユニット側は、配置上後から線をつなぐのは難しいので、周囲とつなぐ線はあらかじめすべて取り付けておきます。アンプ側ユニットの線出しは後からでも可能なのと電源ユニットから来る線を受け入れる側なので、線出しは必要ありません。

  5. 音量調整ボリューム上の抵抗器の取り付けと線出し・・・音量調整ボリュームからは全部で6本の線が出ますので、これらはあらかじめ線出しをしておきます。3本は入力端子行きで、3本はアンプの入力およびアース母線です。入力端子行きの線は余裕をみて長めにしておきます(捻るとかなり短くなりますので注意)。

  6. 電源スイッチのLED部分への部品取り付けと線出し・・・LEDまわりは、並列逆向きのダイオードと直列に入れる抵抗器の配線があります。下に参考画像があります。熱収縮チューブは、普通のドライヤーでは無理で専用のヒーターが必要ですが、45W以上のハンダごての腹であぶるとうまく縮んでくれます。

  7. RCAジャックのアースリングの事前加工・・・RCAジャックのアースリングはナット締めの際にくるくる回ってしまって厄介です。そこで、前加工してL/Rの2個のアース端子をハンダづけでつないでしまいます。上の画像は、パネルを流用してRCAジャックを逆向きに取り付け保持し、アースリングの端子部分を折り曲げてすきまにハンダを流し込んでで接着しているところです。白い紙はハンダの飛沫防止です。このようにつないでしまえば、ナットで締め付ける時に回転したりしません。

  8. シャーシへの主要部品の取り付け・・・ACインレット、ヒューズホルダー、入出力端子、真空管ソケット、真空管ソケットまわりのラグ板、電源トランス、出力トランスをシャーシに取り付けます。音量調整ボリューム、電源ユニット、アンプ部ユニットはまだ取り付けません。RCAジャックは、8〜9mm径の菊座金をかましておくと接触が確実かつナットの締りがいいです。

  9. AC100Vまわりの配線、電源トランス単体の通電試験・・・ACインレット、ヒューズホルダー、電源スイッチ、電源トランスの100V側の配線を行い、ヒューズを入れて最初の通電試験を行います。結線は下図を参考にしてください。描画上の都合で線を並行させていますが、ハム対策として実際の配線では往復を捻ることをお忘れなく。電源トランスの各端子に定格よりもやや高めの電圧がきていることを確認します。

  10. 電源ユニットの取り付け、電源トランスへの配線・・・2個の出力トランスから出ている黒色の線を1つにしてから電源ユニットにつなぎ、電源ユニットをシャーシに取り付けます。電源ユニットと電源トランスの150V巻き線からの往復をつなぎます。出力トランスの1次側から出ている橙色と赤色の線は捻ってから真空管ソケットの1番ピン(灰)と6番ピン(赤)につなぎます。

  11. 電源ユニットの通電試験・・・電源ユニットから引き出したまだどこにもつないでいない線が何かに接触しないように先端にテープを巻くなどして通電試験を行います。電源ON時にテスターを当てておく箇所は「V+〜GND間」がいいでしょう。電圧は電源ON後数十秒をかけてゆっくり電圧が上昇することを確認します。アンプ部にまだ電流が流れていないのでプラス電源の電圧は高めに出ますし、マイナス電源には−0.06〜0.07Vくらいしか出ません。この通電試験がOKでない場合は、決して次の作業には進まないでください。違反してトラブルが生じて掲示板でヘルプを請うても助けることができません。

  12. 真空管ソケットのセンターピンをつなぐアース母線の取り付け・・・本機の場合、アースは母線というほどのものはないのですが、アースを1ヶ所でまとめた方が作りやすいのと、どのみち真空管ソケットのセンターピンはアースしなければならいので、「コ」の字型に曲げた銅線を使ってアース母線としています。ここで、各真空管ソケットの9番ピンとアース母線とをつなぎます。また、ヒーター回路のどこか一点とアースとをつなぎます。どこでもいいので配線しやすい一か所を選んでください。

    6DJ8ピン接続図(裏側から見た図)→

  13. 真空管ソケットまわりの部品取り付けと配線・・・まず、グリッドに取り付ける4個の3.3kΩの配線をします。その際、平ラグとつなぐ線も出しておくと後が楽です。下に画像がありますから参考にしてください(緑色の線)。ちなみに頒布している線材には緑色はありません(適当ですなー)。次に、カソードに取り付ける4個の3.3Ωと820Ω2Wを取り付けます。

  14. アンプ部ユニットの取り付けと真空管ソケット側および電源ユニットとの接続・・・アンプ部ユニットを取り付けます。電源ユニットから出ているV+とV-をつなぎます。アースは、「電源ユニット→アンプ部ユニット経由→アース母線」とすると配線がやりやすいです。あらかじめ真空管ソケット側から出しておいた4本の線をアンプ部ユニットにつなぎます。

  15. 最終通電試験・・・ここまでの配線がすべて完了していれば、音は出ませんが真空管を挿した状態ですべての回路に電流が流れる通電試験ができます。但し、上記8.および10.の通電試験がOKであることが条件です。DCVレンジにセットしたテスターで、出力段カソード抵抗(820Ω)の両端電圧が測定できる状態にして電源をONします。電圧が徐々に上昇して18V前後で落ち着けばひとまずOKです。もし15V以下あるいは20V以上だったら必ずどこかに配線の漏れやミス、ハンダの不良があります。

  16. 出力段のDCバランスの暫定調整・・・この状態でしばらく通電して動作が安定しているかどうかチェックしておくといいです。DCVレンジにしたテスターで回路図でいうところの「A点〜B点」間の電圧を測定します。ほとんど0Vの場合もあれば0.02Vくらいが生じていることもあります。100Ωの半固定抵抗器を調整して0.003V以下すなわち3mV以下となるようにしておきます。

  17. 入力端子〜音量調整ボリューム〜アンプ部ユニット間の配線・・・音量調整ボリュームを取り付けます。パネルとの間に8〜9mm径の菊座金をかますことでボリュームのシャフト部分とシャーシとの接触が確保されます。音量調整ボリュームから引き出してある線を、入力端子(RCAジャック)およびアンプ部ユニットにつなぎます。この時、入力端子(RCAジャック)への線が浮いてしまわないように、ピタックなど配線の固定具を使ってもいいです。私は5P立てラグの空いた穴を使って固定しています。

  18. スピーカー関係の配線・・・出力トランスから出ている白(0)と青(8Ω)の線は、アンプ部ユニットの端子を経由してからスピーカー端子につなぎます。黄(4Ω)を生かす場合はアンプ部ユニットを経由せずにスピーカー端子につなぎます。

  19. 最終チェック・・・「アース母線」と「アース」とつながっていなければならないすべてのポイント間の導通をチェックします。シャーシ、RCAジャックの外側、スピーカー端子の黒い側、ボリュームシャフト、ヒーター回路など。

  20. 音出しと最終のプッシュプルDCバランス調整・・・これで完成です。音楽など聞きながら、時々シャーシを横に倒して出力段のDCバランスの状態を監視しつつ、最終調整をします。シャーシを完全にひっくり返してしまうと、真空管の熱があがってきて2SK30Aの温度が不安定になるので、横倒しでの調整をおすすめします。

左下画像は、ヘッドホンジャックの穴を使ってラグ板を取り付けたところ。2.6mm径ネジを使いましたがジャック側の穴が小さいのですこしだけ広げる必要あり。

以下の画像はV1のものですが、V3とV1、V2との違いは電源回路の平ラグユニットおよびLED点灯方法だけです。それ以外は同じですのでこの画像を参考にしてください。クリックで拡大します。


<調整>

調整箇所は、初段差動回路に入れた2個の100Ω半固定抵抗器のみです。

1mVまで測定可能なデジタルテスターを用意し、DCVレンジにセットします。本機を動作させた状態で出力管の2つのカソード(3pinと8pin)にテスターを当てて電圧を測定します。この電圧が0Vとなるのがベストで、3mV以内にはいるように半固定抵抗を調整して完了です。真空管および2SK30Aは温まると特性が変化し安定するまでに少々の時間を要します。使い始めて1週間後、さらに1ヶ月後くらいに再調整すればいいでしょう。一定の許容範囲がありますのであまり神経質になってゼロを追いかけすぎないことです。


<測定>

オープンループ利得は11.4倍で、負帰還をかけた状態での利得は4.6〜4.7倍でした。負帰還抵抗は3.9kΩと560Ωの固定です。負帰還量は7.8dBとなりました。この時の残留ノイズは45〜50μVです。最大出力は6DJ8の個体によってばらつきがあり、0.45W〜0.55W(5%歪み)くらいです。本機のデータが最大出力が低い部類にはいると思います。

帯域特性は4Hz〜170kHzで-3dBとなりました。歪み率特性は6N6P全段差動と同傾向のまま単純にパワーを落としたような特性になりました。小出力時の歪み率特性は出力トランスの性能がそのまま出ており、アンプのポテンシャルはもっと高いとみていいでしょう。

下のグラフは2014.1に行ったパワーアップの改良の様子です。測定周波数は1kHzで、黒い線が改良前の状態、赤い線が改良後です。地味ですが確実に最大出力はアップしています。なお、すぐ上の過去に取った特性とカーブの様子が一致しないのは、本機を使い続けて時間がかなり経っていることによる球の特性変化や測定条件の微妙が違いがその理由です。


<完成後かなり経ってからの感想>

本機はじつに多くの方が製作されました。最大出力はせいぜい0.5W程度しかないパワーアンプですが、メインシステムとして愛用している方も多いと聞きます。ヘッドホンアンプとしての素性もかなり良いと思っています。おなじみのFET差動ヘッドホンアンプと聞き比べると、音の趣味は同傾向にありながらしかも別の世界を体験できます。

ちっぽけな球、重量級からは程遠い出力トランスの組み合わせからこのような豊かな音が得られるというのは不思議な気がします。私も若い頃は、アンプは小音量で聞くときでも大出力アンプの方が鳴りっぷりが良い、そしてできるだけ重い方が良いに決まっているなどと思っていましたが、あれは一体何だったのだろうと思います。

6DJ8を最大定格めいっぱいな動作をさせて2年以上が経ちますが、この球は結構タフなようでへたりを見せません。久しぶりの特性を測定し直してみましたが、へたるどころか製作当初と全く変化なしでした。


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